放射線が人の健康に及ぼす影響については、広島・長崎の原爆被爆者の追跡調査などの積み重ねにより研究が進められてきており、放射線の有無ではなく、その量が関係していることが分かっています。
内部被ばくと外部被ばく
放射線を体に受けることを「放射線被ばく」といいます。放射性物質が体の外部にあり、体外から放射線を受けることを「外部被ばく」、放射性物質が体の内部にあり、体内から放射線を受けることを「内部被ばく」といいます。
放射線を受けると人体を形作っている細胞に影響を与えますが、どのような影響が現れるかは、外部被ばく、内部被ばくといった被ばくの態様の違いや放射線の種類の違い等によって異なります。
放射線による人の健康への影響の大きさは、人体が受けた放射線による影響の度合いを表す単位であるシーベルトで表すことで比較ができるようになります。例えば、1ミリシーベルトの外部被ばくと1ミリシーベルトの内部被ばくでは、人の健康への影響の大きさは、同等と見なせます。
放射線量と健康との関係
放射線が人の健康に及ぼす影響は、放射線の有無ではなく、その量が関係していることが分かっています。
100 ミリシーベルト以上の放射線を人体が受けた場合には、がんになるリスクが上昇するということが科学的に明らかになっています。しかし、その程度について、国立がん研究センターの公表している資料※1 によれば、100 ~ 200 ミリシーベルトの放射線を受けたときのがん(固形がん)のリスクは1.08 倍であり、これは1日に110g しか野菜を食べなかったとき※2 のリスク(1. 06 倍)※1 や高塩分の食品※3 を食べ続けたとき※2 のリスク(1. 11 ~1.15 倍)※1 と同じ程度となっています。
さらに、原爆被爆生存者や小児がん治療生存者から生まれた子供たちを対象とした調査においては、人が放射線を受けた影響が、その人の子供に伝わるという遺伝性影響を示す根拠はこれまで報告されていません※4。
放射線を受ける量をゼロにすることはできませんし、自然の中にもとからあった放射線や、病院のエックス線( レントゲン)撮影などによって受けるわずかな量の放射線で、健康的な暮らしができなくなるようなことを心配する必要はありませんが、これから長く生きる子供たちは、放射線を受ける量をできるだけ少なくすることも大切です。
- 広島・長崎の原爆被爆者の約40 年の追跡調査をもとにした資料
- 日本人の40-69 歳の男女について、約10-15 年追跡調査したものです。
- 塩づけ魚や干物を1 日に43 g摂取し、たらこ等の魚卵を毎日4.7g摂取した場合※2
- ( 出典)放射線による健康影響等に関する統一的な基礎資料(平成 29 年度版)及び公益財団法人放射線影響研究所ウェブサイト「被爆者の子供における染色体異常(1967-1985 年の調査)」を参考に記述
出典:文部科学省「中学生・高校生のための放射線副読本」より作成